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【全日本ZINEファンクラブ】3通目

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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月25日(シモダ)・10日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら

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かもめと街 チヒロ様

先日は熱量高いおすすめありがとうございました。僕もZINEを買うときはテキストが充実したものを選びがちなので、普段なかなか手に取らないイラストメインのZINEを知れて嬉しかったです。

母アパレルさんの『小学二年生』は以前この往復書簡の打ち合わせをした際にチヒロさんが持ってこられた実物を拝見しましたが、毎日の暮らしがゆるいイラストで紹介されていて素敵でした。あとリソグラフ印刷なのもすごく良くて、この触り心地は電子書籍には出せないよなぁ、とパラパラ捲りながら静かに興奮していました。

「日記本」というジャンルで特集を組めるぐらいに日記をまとめたZINEがたくさんあって、それを読むのが好きでよく手に取るんですが、今自分が生きているのと同じ時代を生きる知らない誰かの暮らしやその中でどんなことを考えているのかを本人の言葉で知れるのってよくよく考えたらすごい事のような気がして。別にそれを書いた人たちが近くに存在しているわけでもないんですが、関係性のない隣人よりよっぽど近くで暮らしているような謎の親近感を覚えます。不思議です。と、本題を忘れて普通に手紙を書いてしまってました。気を取り直してZINEを紹介していきますね。

『へべれけ人生』(荒木千佳)

僕がZINEに興味を持つずっと前から福岡では「10zine(テンジン)」というZINEの即売イベントが年に一度のペースで開催されていて、今年も6月某日にあったのでお邪魔して、そこで一目惚れして買いました。

本と同じぐらいお酒が好きで、このZINEも表紙にお酒の写真が載っているだけでレジに持っていったので我ながらチョロいなと思いつつ、酒場メシの紹介や酒気帯び日誌、酔っ払い短歌など、まるで酒席で話を聞いているかのような取り止めのない、でも酒にまつわるあれやこれやが載っていて楽しい本でした。あとがきを書く瞬間までしっかり飲酒されていたのがめちゃめちゃ良かったです。福岡にこんな面白い人がいたなんて。思わぬ掘り出し物を見つけてその晩はこれを読みながらウッキウキで冷たいビールを飲みました。抜群に美味しかったです。

 

『いちいち言わないだけだよ。-ハロー!プロジェクト楽曲にまつわるエッセイ集-』(てぱとら委員会)

この本は数年前に大阪のシカクで買いました。ちょうどひつじがでお客さんからアンジュルム(ハロプロのアイドルグループ)をお勧めされてハロプロを聴き始めた頃で、そんな折に出会い「これは副読本にちょうど良いのでは……!」と手に取ったのを覚えています。気軽にほいほい買えてしまうのもZINEの魅力(魔力)ですよね。

このZINEに掲載されているエッセイがどれも本当に良くて。正直買った当時はまだハロプロ全体のことをほとんど知らず、取り上げられている楽曲も聴いたことないものばかりだったんですが(逆にこの本を参照しながら楽曲を聴いていました)、それでもハロプロが人生の一部として存在していたことが容易にわかる文章群の熱量が凄まじく、夢中で読んでしまいました。その後も順調にアンジュルムをはじめハロー!プロジェクトのグループにハマり続けて今日に至るんですが、その都度都度手に取っては読み返しています。

先に紹介した『へべれけ人生』の荒木さんも奥付に「ハロー!プロジェクトをこよなく愛しています」と書かれていたり、その他にも周囲に数名ハロプロをこよなく愛するZINEの作り手さんを目撃しているので、その中の誰かがハロプロのZINEを作ってくれやしないかと楽しみにしている次第です。出たら間違いなくほいほい買ってしまう……

 

『月刊魔界』

最後に紹介するのはこの間ひつじがでとあるお客さんから貸してもらったZINEです。

表紙が濃ゆい。中身ももちろん濃ゆい。なんてったって魔界。この往復書簡でチヒロさんから届くお手紙もそうですが、自力だと到底辿り着けないだろう本を周りにいる人の口コミきっかけで知る機会が多々あって、店に立っていると時折こうやって持ってきてくれたり貸してくれたりするお客さん達がいてその度に役得を感じています。ありがたや……

この本は2016年から大分県の佐伯某所で毎年開催されている「魔界フェス」というイベントを記録したアーカイブ本なんですが、読むほどに謎は深まるばかりで。白塗りメイクを施した人間(魔界の住人)達が昼から集まって色んなレクリエーションをして、夜は夜で悪魔達によるディナーショーが催される。この世の不条理をトロ火で煮詰めてその鍋を屋外に三日間放置しました、みたいな独特の味わいが詳細なレポートで紹介されていて、自分の知らないところでこんな祭りが……と衝撃を受けていたら、近所の駄菓子屋店主が白塗りで参加していて、想像より近いところに異世界があることを知り二重で衝撃を受けました。

悪魔は細部に宿るのか、魔界フェスがまた細かい部分で魔界設定にこだわってて、「叩いて!被って!じゃんけんぽん」の掛け声を「ラアーナ!ケトーム!イブリース!(意味:呪って!防いで!僕、悪魔!)」にしているところでめちゃめちゃ笑いました。良い祭り。

知らないところにいる誰かの暮らしを想像する、と冒頭に書きました。そういった意味では『月刊魔界』はその極地にあるようなZINEで、そういう本の存在を知れたことがもう嬉しいです。ちなみにこの本は佐伯某所でしか入手ができないらしく、そういった点でも異界感強めで最高です。

お酒、アイドル、魔界となんとも取り止めのない紹介になってしまいましたが、その取り止めのなさすらもまたZINEの良いところ。ただどんなテーマであっても、隅々にまでその対象への愛がこもっているのが共通して素敵だなぁと思いながら、またあれやこれやと手を伸ばしていきます。ではでは、次回の書簡も楽しみにしております。

シモダ

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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。

次回更新は「かもめと街」です。

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