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【全日本ZINEファンクラブ】13通目

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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月25日(シモダ)・10日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら

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かもめと街 チヒロ様

(遅ればせながら)あけましておめでとうございます。

年が明けてもう25日も経ったなんてとても信じられません。少し前まで冬とは思えない暖かい日が続いていたのでついついまったりしてしまい、ここ数日の寒さでようやく現実に戻ってきた感じがします。この調子だとあっという間に一年が過ぎてしまいそうで恐ろしいですが、何はともあれ今年もよろしくお願いいたします。

べっくやちひろさんの『ママになるつもりはなかったんだ日記』、とてもインパクトのあるタイトルですね。大きく配置された「ママ」の二文字に思わず目を引かれました。

30-40代で属性の違いによる分断をすごく感じるの、めちゃめちゃわかります……! まさに自分も今その世代ど真ん中なんですが、ちょうど会社員から自営業(脱サラ)になったり結婚をしたり子供が生まれたり、属性が変わる出来事が我が身に起こって、それが原因で疎遠になってしまう人もいて。もちろんそうじゃなく引き続き付き合える人もいれば、それがきっかけで新たに出会う人もいるんですが、属性の違いで線が引かれてしまうことがあるのはものすごく感じるようになりました。他の人もそうなのかな……

自分と異なる立場の人のことは想像するしかないし、でもどれだけ想像してもわからないものは当然あります。だからこそべっくやさんの日記もですが、色んな人が書いた日記をもっともっと読みたいなぁとチヒロさんの紹介を見て改めて思いました。少し前に『みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに』というタイトルのZINEが出ましたが、同様に「みんなもっと日記を読んだらいいのに」と声を上げていきたいですね……!(と言いつつ今回紹介するZINEは日記ではないんですが……)

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『めでたい  vol.0』(にゃんとこ)

以前何かのお祝いでお客さんからプレゼントしてもらったZINEで、年明けに少し気持ちが塞いでしまった時に「何か縁起の良いものを読みたい……」と思って手に取って眺めていました。どんなコンテンツにも触れたくないなぁと思った時でもこの本なら手に取れる、というZINEが手元にあるのって本当にありがたいです。

イラストレーターと踊り子のユニット「にゃんとこ」の結成秘話や民謡やおいしいたべものの話などの文章や、ゆるくてやさしいイラストがたっぷり掲載されています。「祭りと社会とハードコア」というエッセイはとても短い文章なんですがものすごく骨太で。隅から隅まで好きなものを詰め合わせて一冊の形にしたんだろうなぁ、と作っている時の様子まで浮かんできます。28Pと負担なく読めるボリュームなのもまた良くて、今後も度々お世話になりそうです。

 

『たやさない』vol.1(hoka books)

京都にある新刊書店「hoka books」が刊行しているリトルプレスで、現在vol.3まで出ているとても素敵なシリーズです。さまざまな場所で創作している人たちがその活動を続けている日々のことを書いていて、各々がそれを続けるための工夫みたいなものを読んでいくうちに自身が持つ創作の種火に風が送られてくるようで、すごく勇気をもらえます。「たやさない」ってタイトルが本当にぴったりです。年末年始のんびりし過ぎたので己に喝を入れるために最近vol.1を読み返しました。(ちょっと気合が入りました)

表紙の一部を切り取ったものを栞にしていたり、内容だけでなくデザイン面でもちゃんと手間がかかっていて全く隙がないです。し、巻末に掲載されているあとがきの文章が毎号とても素晴らしくて、早く次の号を読みたいなぁと思いながら既刊を手に取っています。

 

『つくづく休刊記念増刊号 自家中毒』

数年前に京都のホホホ座さんで購入したもので、『つくづく』というインディーズ雑誌が創刊してまもなく休刊宣言(その後復刊して現在は多数刊行)し、それを記念して2020年に作られた別冊増刊号です。『たやさない』を読んで「いよぅし、何かやるぞ!」と意気込んでまず手に取りました。自家中毒、良い言葉ですよね。

ホホホ座やタコシェの店主による読書感想文をはじめ、豪華な参加メンバーが寄せる感想文はどれも秀逸でそれだけでも読み応えがあって良いのですが、頁の至る所に仕掛けが施されていてその実験的(自由研究)な感じがたまらないです。

そしてわかしょ文庫さんのエッセイ「大豆のすべて」がめちゃめちゃ良い……。『うろん紀行』や現在ウェブで連載されている「美しきもの見し人」、フリーペーパーに寄稿された短い文章、わかしょ文庫さんの書く文章はどれを読んでも何度読んでも「すげぇな……」と凄過ぎて絶句してしまうんですが、このエッセイも垣間見える哀愁が本当に良くて……もう……ぜひ読んでください……!

『たやさない』や『自家中毒』はもしかしたらZINEというジャンルに属さないのかもなぁと思いつつ、紹介したい気持ちが上回ったので素知らぬ顔して選んじゃいました。全日本ZINEファンクラブを名乗っている以上はZINEを紹介せなばなのでしょうが、いったいどこまでをZINEに含めていいのか、同人誌やリトルプレスとの境目がいまだにわからずにいます。そもそもそれも人間と同じでラベリングして分断するものでもないのかもしれませんが……

例年正月はブレーキを踏んでしまうんですが、今年も御多分に洩れずロケットスタートとはなりませんでした。とはいえ去年は年始早々流行病でダウンしたので、それに比べたらまだ座って本が読めているだけでもマシだと思ってのんびり、でも少しずつギアを上げていきたいと思います。

その点チヒロさんは年始から精力的に個展を開催されていて、すごいなぁとただただ尊敬するばかりです。フローベルグさん、一度だけお邪魔したことがあるんですがめちゃめちゃ素敵な本屋さんだったし、そこにチヒロさんの作品が飾られているとなるとより一層すごいんだろうな……蔵前近辺に住んでいないことが悔やまれます。それにしても個展期間に店内の本を紹介していく試み、とても良いですね!(あの空間にずっと居たらほしい本がどんどん増えていきそう!)

展示の残り期間もどうぞご無理なさらず、楽しまれてください。

次回のお手紙も楽しみにしております

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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。

次回更新は「かもめと街」です。

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