>>白金ニューヒツジホテル

日報(230423)

四月二十三日(晴れ)

カウンター席に座った某氏が読んでいた本の中身をスマホで撮影していたので、中身を撮るのはあまり好ましくないしSNSにあげるのは控えてくださいねと伝える。本の中身を撮影する。それを誰かに共有する。あるいはどこかに公開する。どこまでが許されててどこからが許されないのか、正直いまだによくわかってない。だからダメ絶対とも言えないし、なんで(なにが)ダメなんですかと問い返された時に返す言葉もないので、そうなる前に結局それが粋か野暮かみたいな話で毎回ふらふらと不時着させてしまう。

自店に限った話で言えば、カメラで撮影した本の中身をSNSで公開するのはアウト、撮影及び知人への共有はやるならせめてこちらにバレないようにしてください(バレたら野暮ですねって言っちゃうと思う)ぐらいが基準。ただそれをルールとしてそこかしこに書いてしまうとそれだけで息苦しくなるので、暗黙の了解にしつつ、はみ出しそうであればその都度声をかけるようにしている。声をかけることもそれはそれで野暮なので、粋に伝えられるようになりたい。しばらくしたら某氏が「さっき撮った写真は削除して、でも手元に置いておきたいと思ったのでAmazonで注文しました」と教えてくれた。粋だ。

数年前の初来店時はまだ未成年(17歳)だった某氏が20歳になって初めて来店。当時その子に対してお酒が飲める年齢になるまではなんとか場を続けておきますね、みたいな話をしていたこともあり、数年越しの約束が達成された。目出度い。約束っていうほどきっちりした取り決めではない(指切りもしていない)ものの、自分の中で確実にこの数年間場を持続させる動機の一つにはなっていたので、ものすごく感謝しているし、その感謝の気持ちが空回りしていつになくふわふわしていた。猛省。

場を続けていくうちに来店した人たちと大なり小なりの約束を交わしていて、そうやって交わされたひとつひとつの約束が結果的に場を存続させる理由になって、そのおかげでこれまで場が続いてきた。毎度確実に次が約束されてない中で、それよりもずっと先の約束を達成する喜びを感じさせてくれる人たちがいることに感謝の気持ちでいっぱい。達成感に満ち溢れているので今ならもういつ死んでも悔いはない。と、ちょうど某氏たちと入れ替わるように来店した某氏に話したら、人生最後の一杯をどうぞってお酒をご馳走してくれたので、お言葉に甘えて松露の湯割りをいただいた。またしても粋。

某氏に最近入ったおすすめの焼酎はと尋ねられたので、昨日届いたばかり夏の松露を今色んな割り方で試していると言ったら現状の最適解をくださいと注文が入る。個人的にこれだと思う出し方をしつつ、別のグラスを用意して移し替えて飲んでもらったり(それだけで味わいが変わる)日頃閉店後にひとりでやってることに近い飲み方で試してもらう。幸い気に入ってもらえて、それどころかめっちゃ好きですこの焼酎と絶賛。なぜか最後は夏の松露をテーマにしたZINEをつくりましょうという話になった。面白そう。