>>白金ニューヒツジホテル

日報(230424)

四月二十四日(くもり時々雨)

開店から雨がずっと降ったりやんだりしていて、気温もがくんと下がった。数日前あまりにも暑すぎて冷房をつけたのに、今日は逆に暖房をつけるか迷うぐらい寒い。寒暖差がダイレクトに客足に影響する部類の店なので、案の定終日凪ぎ、数日分の日報を書いた。あまりにもわかりやすく三日坊主になっていて(四日目から更新が止まってて)我ながら驚く。

それでも時間があったので、某氏に借りた『アジア「窓」紀行』を読み進める。凪の店内は本を読むのにちょうど良い。頁を捲る手が止まらなくなり、もう少しで読み終わるかなというタイミングで階段を上がってくる音がしたので、栞を挟んで本を置いた。

日曜日の昼、営業前に近所にあるギャラリーに展示を観に行ったが、その展示をしている作家さんがわざわざこちらに立ち寄ってくれた。嬉しい。展示会場では(ちょうど熱心に質問をされている方がいたので)特にお声がけもせず、作品だけを観て帰った(それだけで充分満足する素晴らしい展示だった)ので、挨拶もしなかった非礼を詫び、改めて展示の感想を伝えた。展示を見に行った帰り道、同行していた妻を感想を言い合いながら散歩してそういうのも含めて物凄く豊かな時間を過ごせたと言ったら、作品を書く動機やご自身のルーツについて教えてくださって、あの日散歩の時間までで完結したと思ってた展示が実は今日この時(作家さんと話をするとき)まで繋がっていたことに気づき、ひしひしと有難みを感じた。展示されている作品の外側、空間の外側、時間の外側にまで世界はひそんでいて、ふとした時に視界に入る。そういう瞬間があるので、展示を見にいくのをやめられずにいる。

もともと今回の展示や作家さんのことは大阪にあるtoibooksの磯上さん経由で知った。関西の大好きな作家さんが今度福岡で作品展をするので案内葉書を設置してほしい。そんな連絡が突然来なかったら、おそらくその展示も作家さんも、そもそも近所にこんな素敵なギャラリーがあることすらも知らずにいたと思うので、そのきっかけをくれたのが福岡の人でも美術館系の人でもなく大阪の書店であるのが不思議で、うれしかった。今回の展示は作品集の出版記念展で、初めて作ったその作品集をtoibooksでも販売しているとのことで、そこで作品集を買った人のエピソードを嬉しそうに語る作家さんの話を聞いて、そんな話ひとつとってもtoibooksがいかに素敵な本屋であるかを再認識し、それを二人で言い合った。toibooksには不思議な引力がある。また行きたいな。

作家さんが帰った後も相変わらず凪いでいたので、ちょっと早く閉めようかなと思って日付が変わるぐらいを頃合いに片付けをしていたら近所にある某酒場(日曜日に行ったギャラリーと同じ区画にある)の大将から電話があり、「今某氏(将棋仲間)と店で将棋指してるけど、来る?」とお誘いがあったので「行きます!」と元気よく返事をして、急いで片付けを済ませて駆け足で向かった。