>>白金ニューヒツジホテル

日報(230503)

五月三日(曇り)

大型連休にあやかるべく17時定刻に開店するもしばらく凪の時間が続き、数日分溜まっていた日報を直近(前日分)まで更新した。自らで課した業とはいえ数日分溜まればそれなりにストレスも溜まるし、それが解消された時の開放感は気持ち良い。

某夫妻が遠方からの知人を連れて来店。以前購入してくれた『さよならシティボーイ』の感想を聞く。読んでいくうちにどんどんすなばさん(著者)に会いたくなるとのこと。わかる。とてもよくわかる。昨年末イベントでひつじがに来店してくれた(店内で朗読までしてくれた)が、その時に知ってたら来たのにと言われ、じわじわとすなばさんの認知度が広がっているのを感じ嬉しくなった。今回はすなばさんが執筆陣に名を連ねる『ミスドスーパーラブ』を購入してくれた。すなばブームが到来する日も近い。

その後キクチ先生が来店。最近日報を書いていて、SNSで来店投稿してくれた人は実名を載せている(そうでない人はプライバシー保護のため基本「某」にしている)旨伝えると普段あげないInstagramのストーリーを投稿してくれた。この日報に掲載されることに何の名誉があるのか定かではないが、少なくとも名を記すことに問題はないとの言質をとったに等しいので、お言葉に甘えて名前を出させてもらう。キクチ先生はひつじがのメニュー表に記載されている順番で焼酎を飲み続けている猛者で、しかもそれを四周繰り返している(今は五周目を進行中)猛者中の猛者である。真似して挑戦する人たちが都度現れるものの結局周回する人は以降現れることなく、ただ一人我が道を突き進んでいる。この日は玉露(中村酒造場)の水割りを白麹・黒麹でそれぞれ出してその感想を聞いたが、当初に比べて確実にそのお酒(麹違い)の特徴を捉えたコメントが返ってきて驚いた。継続は力なり。味の感想に正解はないし感じたように飲めば良いとは思うものの、その解像度が徐々に上がっていく様を間近で見ることができるのは、とても楽しいことだ。

キクチ先生を見送りに下に降りると偶然物件の大家さんと出会した。ちょうど一階の店に立ち寄った帰りとのことで、軽く一杯寄りますねとのことで、偶々その時間でバイトが終わった下の店のスタッフも連れて一緒に階段を上がる。その後一階の店のオーナーさんも店の仕込み終わりで立ち寄ってくれて、急遽物件の定例会のような人員構成になった。大家さんも一階のオーナーさんもそれぞれ話をすることはあったが、一堂に会すのは四年強続けてきて初めてのことで、こんな日が来るとは思わなかった。大家さんと一階のオーナーさんとの出会いの話や数年前に起こったとある出来事の後日談など、この建物に関わる人たちとしかできない会話が飛び交った。ひつじがをやっている場所はもともと大家さんが職場として使っていた場所らしく、ゆえに物件に対する思い入れも深くあり、そんな場所で店を開けていることの有難さを話を聴きながらひしひしと感じた。契約当初、建物に入った時の空気が気にいってその場で申し込みをして、居抜きで渡された状態ほぼそのまま(本棚を追加する程度でその他は弄らず)使っていたが、この場自体がもつ、たかが数年では到底醸成されないような、独特の空気感の秘密が何となくわかったような気がした。贅沢な夜。