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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月10日(シモダ)・25日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら。
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かもめと街 チヒロ様
ついこの間まで寒い寒いとぼやいていたはずなのに、外に出ると自然と「あつっ……」と零しながら汗を拭うようになりましたね。暦の上でも6月に突入しているのでそりゃ暑くもなるのでしょうが、如何せん体がその温度変化に全くついていかず。夏本番を前にしてすでにバテの兆候が見え始めています。
改めて先日の文学フリマ東京、お疲れ様でした。
当日は皆さんの速報を見ながら現地の様子を伺っていましたが、ほんと相当盛り上がっていたみたいですね。手に入れたZINEを写真付きで紹介されていた方々の投稿を見ながら、あまりの羨ましさでハンカチを噛み締めました。次回はいよいよ会場も変更になるとのことで、ますます規模と勢いが拡大している文フリ東京から目が離せないです。
そしてその余波が福岡のひつじがにもじわじわと届き、店頭にも先の文フリ東京で初売りになったZINEがちらほら並び始めました。毎回東京開催の後はどどどっと新刊が入荷するのですが、その数も回を重ねるごとに確実に増えていってて、物理的に店頭に置ける数は限られているので悩みながら仕入れています。仕入れたいZINEはまだまだあるのに……!
チヒロさんにとっての週刊少年ジャンプ。それは読みたい。西尾勝彦さんの詩集は僕も持っていますが、この本の存在を知らなかったので教えてもらえてよかったです。たしかajiroさんに入荷していたと思うので、今度伺った時に見つけたら買います。ajiroさんといえばチヒロさんの本もお取り扱いが始まりましたね!
『おてあげ』何度も書店で見かけてはいたのですが、読んではいなかったのでこれを機に手に取ってみます。これもたしかajiroさんにお取り扱いがあったはず。
ひつじがの他にも福岡市内にZINEやリトルプレスに注力してくれる書店さんがあるといいなあとずっと思っていたんですが、今はajiroさんがその分野も手厚く仕入れてくださってるので捗ります。どうしても欲しかったらネットで買えますが、どうせなら書店で実物を手に取りたい(もっと欲を言えば偶然出会いたい)ので。未知のZINEに出会えるかも、とajiroに足が自然と向かいそうです。
ではでは、今回の紹介に入らせていただきます!
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『時間旅行者の日記』藤岡みなみ
もしかしたらもう読まれてるかもしれませんが、タイムトラベル専門書店utouto店主の藤岡みなみさんがこの間の文学フリマ東京で初売りされた日記です。
1月1日から12月31日までの366日分が収録されていますが、日付は連続していてもその年度がバラバラで。今日は30歳、明日は10歳、そして明後日は33歳……とさまざまな年齢を行ったり来たりする、まさにタイムトラベラーの日記と言っていい構成の妙。それが斬新通り越してもはや発明の域で。どうやったらこんな発想に辿り着くことができるのか……
年齢によって文章のニュアンスが異なるので、同一人物の日記を読んでるはずなのに複数の主人公がいるように感じられて。でも読み進めるうちに過去と未来が繋がりながら藤岡みなみさんの輪郭として浮かび上がってくるのが本当に面白いです。
誰かに久しぶりにLINEを送った(あるいは久しぶりに届いた)時に過去のメッセージがたまたま目に入ることがあって、それがほんの数年前なのに自分でも信じられないような顔文字を使っていたりして数年越しに恥を感じることがあります。そういう事故に遭いたくないので、なるべく過去の自分の文章は見ないようにしているんですが、藤岡さんの日記を読んで改めて俯瞰でさまざまな年齢の自分の文章を並べてみるのも楽しそうだな……と思いました。
『異常係長日記』しりひとみ
これも先の文学フリマ東京で初売りされていた日記本です。
以前お手紙で紹介した『これも地獄と呼ばせてほしい』の著者しりひとみさんの新刊で、前作の衝撃がとにかく忘れられず今回いちばん入手したかったZINEでした。
会社や家庭での出来事を中心にしりひとみさんの日常が綴られているんですが、身に降りかかる壮絶なエピソードも圧倒的な文章力と滲み出るユーモアで読み物として昇華されていて、前作同様頁をめくる手が止められず一息で最後まで読んでしまいました。
タイトルの「異常」という二文字が持つ意味合いが読む前と後でがらりと変わるので、是非ともそれを体感いただきたいです。
『kokushibuntsuushow』国士文通省
先日ご近所の本屋青旗で開催されていたこの方の展示を観に行き、その時に入手しました。
福岡を拠点に政治ポスターの前で自身のポートレートを撮影したり身の回りの日常をアーカイブしたりされている作家さんで、このZINEには2007年から2024年までの制作がまとめられています。
ファッションを土台に置きつつ、自らの生活を切り取りそれを記録として残していく様はある種日記的で。断片を追いかけていくうちにぼんやりと作者の人物像が浮かび上がってきて面白かったです。
特にお子さんが産まれてからは制作物にも度々子が登場していて、生活と創作が地続きにあるからこその表出だと思うし作家の父性みたいなものが作品から滲み出ているのも最高でした。
シンプルに文才で圧倒してくるもの、構成を捻って読み手の心を掴むもの、アウトプットの手段から他と異なるもの。生活の記録ひとつにしてもその見せ方はいくらでもあるなあ、と改めて日記本の可能性を感じた一ヶ月だったような気がします。
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福岡では今週末から「10zine(てんじん)」というZINEの販売会が開催されます。もう長く続いているイベントで、普段入手できないようなZINEが並ぶ貴重な機会なので今からワクワクしています。
今回からひつじがも参加させていただくことになり、新刊が間に合わなかったので既刊を並べる予定です。コンスタントに新刊を出し続けている人すごすぎる……
また次回のお手紙でそのイベントの様子もお伝えしますね。
そして7月中旬にはひつじがでもZINE /リトルプレスの即売会「カウンター」のvol.2を開催予定です。小規模な即売会を定期的に開く(それによってプチ締め切りを設ける)のを目的に、3ヶ月刻みで年に4回できたらと思って始めましたが、3ヶ月後ってあっという間にやってきますね……不思議……
イベントの企画と日々の営業で若干溺れそうではありますが、隙間を見つけて新作の制作にも手をつけていきたい今日この頃です。お互い夏の暑さにめげず、がんばっていきましょう。
では、次回のお手紙も楽しみにしてます!
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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。
次回更新は「かもめと街」です。
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