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【全日本ZINEファンクラブ】17通目

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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月10日(シモダ)・25日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら

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かもめと街 チヒロ様

すっかり春らしい気候になりましたね。

暑いのも寒いのもすこぶる苦手なので、今は数少ない活発に動ける時期……なはずなんですけど相変わらず布団の中が心地良すぎてつい寝過ぎてしまい、昼間は大抵ぼうっと過ごしています。春眠暁を覚えず。睡眠に時間を溶かしてしまうのももったいないような気がしないでもないですが、欲求に勝てません。

前回も素敵なおすすめありがとうございました。『お調子者のスパイス生活』も『台所珈琲の手びき』も、読むと生活が少し豊かになりそうな感じがしますね。スパイスも珈琲もわりと身近にありながら、いざこだわろうと思ってもどこから何から始めていいかわからなかったりするので、そんな時にこういった手びきのようなものがあると助かります。し、まずはZINEを買うことから始めてみるのも良いかもしれないですね。

そして『読点magazine、増補版』は気になりすぎた結果、ひつじがでもお取り扱いさせていただくことになりました。これはたしかに痺れますね。場を持続させる上で参考にしたい内容がたくさん載っていて、目から鱗がぽろぽろ溢れました。チヒロさんが紹介されていたように、これから本屋さんを始めたい人は絶対に読んでおいた方が良いと僕も思います。この本に影響を受けて本屋を始める人が自分の周りにたくさんいたらきっと楽しくなるはず……!

このお手紙のやり取りで紹介いただいたZINEを仕入れるのはおそらくこれが初めて(?)だと思いますが、これまでにご紹介いただいたZINEもいつかチャンスがあればと虎視眈々と狙っております。ある程度お互いの紹介が増えてきたタイミングで「全日本ZINEファンクラブ」フェアみたいなことをやってみるのも楽しそう。なんてことを思いつつ、今回のおすすめへと移らせていただきます。

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『ポートピア花壇捜索隊』(Towers)

先月20日に大阪からシカクの店主たけしげみゆきさんをお招きして、「シカクのイチオシ!ZINE紹介」というイベントを催しました。トランクいっぱいの面白いZINEをカウンターにずらっと並べて(圧巻!)、およそ1時間ぶっ通しでたけしげさんのプレゼンを聴き、読みたい気持ちを最大限まで高められた状態でその場で直接購入する……今思い出しても夢のような時間でした。

イベントに参加された方が一通り購入し終わった後で自分もここぞとばかりにお買い物をして、その内の一冊がこの『ポートピア花壇捜索隊』です。神戸市内を散歩しているときにたまたま目にとまった花壇が気になって、側面に書かれていた「ポートピア’81」という文字をきっかけにその花壇の出自を知り、現存している花壇を探してみようというところから始まり、現在までに発見された18箇所についてまとめられています。こういうZINEが手に入るのがシカクの魅力なんですよね。

捜索報告の合間にポートピア’81関連の話題や当時のパビリオンの様子について書かれていたり捜索隊会員証や花壇のペーパークラフトが特典で付いていたり隅から隅までこだわりが詰まっていて、そういう遊び心にまたやられてしまいます。

まだまだ捜索途中とのことで2以降の続編が楽しみです。

 

『HYPERTEXT』(SAPPORO POSSE)

三月上旬のある日、突然XのタイムラインにこのZINEの入手報告がパラパラと上がり始めました。それが次第に増えてきて、何事!?と思いながらどんどん気になってしまい、これはもはや読まねばと思った頃にはオンラインショップはどこも品切れ。なんとか手に入らないものかと引き続きSNSに張り付いて、若干遅れてオンライン販売を始めた書店で無事入手。(少なくとも僕のタイムライン上では)社会現象レベルで話題に上がっていました。

元々はクラウドファンディングで制作され、その一部が書店販売用として流通したこのZINE。サイズも厚みも電話帳並みです。特集記事は「カウンターカルチャーと陰謀論」で、主にアメリカのそれらについて語られています。

どの記事も丁寧に纏められていて読み応えがあるのですが、何より全体の構成が素晴らしくて。順を追って読み進めていくと、前の記事に出てきた人物が読んでいる記事のキーマンになっていたり、一つ一つの出来事がパチパチと繋がりながらどんどん深いところに潜っていく感覚を味わうことができます。インターネットを初めて触ったときの、リンクを踏んでいろんな記事をジャンプしながら少しずつ真相に近づいていくワクワクを紙面の上で体験しているような不思議な読み心地。文句なしに面白かったです。

今は書店を介さずクラウドファンディングで出版されるケースもぼちぼち見られるようになってきました。今回はたまたまタイミングが良くて入手できましたが、なぜこの本の存在にクラファンの段階で気づけなかったのかと己の怠慢を悔やみました。

 

『#OC』(急行2号)

九州を拠点に活動されている作家、急行2号さんが先の「コミックシティ福岡」で頒布した自主制作の新刊イラスト集が素晴らしかったので、今回は最後にそれをご紹介させてください。

この作品集には急行2号さんがメインアカウントで投稿されているイラストではなく、それ以外で描かれたアイデアスケッチ(と呼ぶにはクオリティが高すぎる)を中心に掲載されています。

ガールズイラストで注目を浴び、今は東京で個展を開いたり出版社からイラスト集を出されたり小説の挿画を担当されたり活躍の幅を広げてられてますが、急行2号さんが凄いのはガールズイラスト以外も描けちゃうところ。この作品集には老若男女ありとあらゆるキャラクターが、さまざまな装いで登場します。

ページ毎にがらりとイラストの世界観が変わり、眺めているとなんだか急行2号さんの頭の中を覗いているかのようで。昔、買ってもらったゲームの攻略本に載っていたキャラクター設定画像を見ながらワクワクしたことを思い出しました。とても素敵な絵を描かれる方なので、ぜひ機会があれば展示等も観に行かれてみてください。

先にも少し書きましたが、クラウドファンディングのリターンや自家通販、即売会などZINEの入手経路が多すぎて興味を持てば持つほど追いかけるのが大変になってきました。

九州でも少し前に北九州や熊本でZINEを冠したイベントが催されていて、身近なところで盛り上がってきているのを感じています。全日本ZINEファンクラブを名乗っているからには各地のそういう動きも網羅していかねば恥ずかしいぞ、と思いながらもそれら全てを網羅するむずかしさ(果てしなさ)に頭を抱えています。むむむ。

とはいえ、追いかけるのがむずかしくなるほど自分の周りに面白いコンテンツやイベントが溢れているのはよくよく考えたら有難いことでしかないので、引き続きアンテナを張り巡らせながら全国津々浦々の素敵なZINEを見つけていきたいです。

最後にちょびっと宣伝ですが、今月末にブックバーひつじがでも小規模なZINEの即売会を催す予定です。イベントを催すことについてはお手紙のやりとりでも度々触れてきましたが、ようやく実現に漕ぎ着けました。やるやる詐欺にならなくてよかったです。笑

福岡でZINEを作られている方や、以前別の即売会で隣のブースにいらっしゃった方。寄稿をきっかけに知り合った県外の作り手さんや書店さん等、多数の出店表明をいただきました。ありがたや。

まずは初回やってみてからですが、あわよくば今後も定期的に開催していけたらと思っていますし、次回以降もしタイミングがあえばチヒロさんもぜひ。(この場を借りてスカウト)

ではでは、次回のお手紙も楽しみにしてます。

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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。

次回更新は「かもめと街」です。

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