>>白金ニューヒツジホテル

日報(230504)

五月四日(雨のち曇り)

定刻開店を遵守。街では昨日からどんたくが開催されているようだが、福岡に移り住んで数年経つものの未だかつて一度も目にしたことがないのでどんたくがどういう催しなのかいまいちわからずにいる。誰かが踊ったりするらしいとの噂は聞いたが、果たして誰がどこで何を踊っているのか。こうなってしまうと感覚的にはリオのカーニバルと変わらないし、何ならリオのカーニバルの方がたやすくイメージできてしまう。

某作家さんが来店。ちょうどその人のイラストがパッケージにデザインされた菓子があったので振る舞いつつ自身も味見。おいしくてぺろりと平らげてしまった。近々控えている展示の話や、その後の活動予定など近況を教えてもらう。直近で面白かった展示について尋ねられたので、二本木で少し前に開催されていた黒瀬正剛さんの個展や現在天神のAesop.跡地で開催されている生島国宜さんの作品展の話をする。どちらも一つ一つの作品は勿論、それを飾る空間の扱い方が絶妙で、心地が良かった。どうも最近はそういう展示(場に対するリスペクトが感じられるもの)に惹かれるらしい。観た瞬間にはそこまで考えてないが、結果的にそうなっているのをこうやって改めて誰かに話したときにふと気づく。

PayPayドームで開催されていた野球を観戦し、そのままドームから歩いてきたという某氏が来店。とても良い運動ですねと言いながらちんぐの炭酸割を出す。歩けば歩くほど、疲れれば疲れるほど美味しいのがちんぐの炭酸割。楽しみ方をわかってらっしゃる。

その後来店した某氏に「コーヒーはありますか?」と尋ねられ、ありませんと答える。それでは焼酎の湯割りとくださいと言われたので、コーヒーはないがせめてもの落ち着きをと松露白麹の湯割りを出した。コーヒー、開店当初一瞬だけ出していたものの、非常に厄介な珈琲通のおじさまに説教まがいの発言をされてしまい、しょんぼりしながら早々にメニューから消してしまった。当時は店を始めたばかりだったので言い返すことができずにいちいち落ち込んでいたが、今なら仮にそういう人が現れたとて跳ね返せそうな気がする。日中の営業も検討しているし、そうなるとやっぱりコーヒーがメニューにあっても良いとは思うので、様子を見ながらメニューに復活させていきたい。みたいな話を焼酎の湯割りを出した某氏としていたら、なぜか波長の話になった。

その人が言うには人にはそれぞれ波長があって、それが合うか合わないかで関係性が決まってしまうとのこと。一方が一方に合わせることで無理やりその場を成り立たせることはできても、片方が我慢し続ける関係は長くは続かないし、いつか破綻する。そうなるぐらいならなるべく自身の波長を乱すことなく、その中で合う人たちと居る方が良いとのこと。なるほどが過ぎた。自店の場合も当初はそれができていなかった(その意識がなかった)ので異なる波長の人と一つ一つ向き合って乱れていたし、諸々あって今は心地良い状態が見つかりつつある。勿論それはそれで行き過ぎると好きな人しか入れない店になるし、それはそれで違う(やり過ぎだ)と思う。そういうのは家でやればいい。わざわざ不特定複数の人が訪れる店である理由をしっかり考えて、個人(私)の波長ではなく場(ひつじが)の波長を見つけて、その一部として場をチューニングしていきたいですなどと言いながら盛り上がり、いつの間にか二七時半。閉店時間を忘れるほどに波長が合ったのかもしれない。良い夜。