五月十二日(晴れ)
福岡市東図書館に関わる某氏が、近日催すイベントのチラシを持参して来店。数学者の森田真生さんが来福してトークライブをするとのこと。すごい。ちょうど同日に古賀にあるノミヤマ酒飯さんで白石酒造のイベントがあり随分前からそちらに誘われていたので、今回は泣く泣く断念した。
森田さんは昨年天神の「本のあるところajiro」でゲリライベントを催しており、それに偶然参加して話や著書の朗読を聞いたのが物凄く面白くて、その勢いで著書も読んだ。とはいえ(同日に開催される)白石酒造のイベントしかり、それをすごいと思うのはそれのすごさを知っているからで、それを知らない人にとってはたとえ近場で何があっても惹かれることはないだろう。自分にだってそれはあるし、自分がすごいと思うもののすごさを知ってもらうのは簡単じゃない。結局イベント参加者の数やその予約が埋まる勢いでしか可視化されないもどかしさがあるし、これだけイベントが乱立している中で参加者を集めるのもむずかしいですよね、と話す。知ってもらいたいからイベントをするのに知られてなければ参加を検討すらしてもらえない。店で展示やイベントを催すたびに似たようなことを思う。だからこそこうやって地道にチラシを配ってコツコツ周知を広げるしかない。貰ったチラシも大切に配布しなきゃな。
四年前に福岡を離れた某氏が、およそ四年ぶりに来店。特に何を意識するでもなく普段通り出迎えると「シモダさん、なんだか落ち着きましたね」と言われた。そりゃ人間年をとればそれなりに落ち着いてくるわけで。前回会ったのが四年前ならそれも当然ですよと返し、ただ自覚してない自身の変化を定点で見ている人から教えてもらえたのは面白かった。確かに開店当初は度々言われていた「気さくな店主」という表現を今はとんと聞かなくなった。それが年相応の変化なのか店を続けたことによる慣れの問題かはさておいて、ちゃんと落ち着いててよかったと思う。
数日ぶりに顔を合わせる人もいれば、数年ぶりに顔を合わせる人もいる。毎日見ている自分にはあまりにも些細すぎて見落としている日々の変化を、その都度都度で顔を合わせる人たちが教えてくれる。そのやりとりを通して時間の経過を感じることができるのは、店をやっていて面白いことの一つだし、それを教えてくれる人(複数回来店してくれる人)がいるのは本当に有難いことだなと思いながら、もう微塵も思い出せない四年前の気さくな店主の影を探した。