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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月10日(シモダ)・25日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら。
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かもめと街 チヒロ様
文学フリマ大阪、お疲れ様でした!
チヒロさんと知り合ってまだ間もない頃「いつかどこかのイベントでご一緒できたら良いですね」なんて言った記憶がありますが、ついにそれが実現しましたね。しかも東京でも福岡でもなく、ちょうど中間に位置する大阪で。改めてZINEを作っていてよかったなと思いましたし、イベント翌日まるで示し合わせたかのようにZINE好きの聖地シカクさんでばったりお会いしたのも嬉しかったです。さすが我々全日本ZINEファンクラブですね。
県外開催の文学フリマに参加したのは今回が初めてだったのですが、これまで参加していた福岡のそれより規模が大きく人も多く、終始圧倒されてしまいました。県外から販売に来られる人たちはこういう気持ちだったのか。いつも福岡(地元)でのんびりやっていた己の甘さを痛感しました。が、それでも店や僕のことを知ってくださってる方や偶然立ち止まられた方とお話ができたし、チヒロさんにも会いたかった人たちにも会えて遠征した甲斐を感じました。東京……はまだちょっとこわいですが、また機会があれば他地域の文学フリマにも出店できたらと思っています。
収穫の多いイベントでしたが唯一(にして最大の)悔やまれたことは、単身参戦してしまったので他のブースを見て回ることができず、挨拶せねばならない方々にもそれができなかったことです。もっと積極的に油を売ればよかった。終わった後ならなんとでも言えるのですが、全然うまくできなくてブースで地蔵のようになってしまっていました。無念。
そんな中でブースが比較的近くにあって辛うじて購入することができたZINEと、翌日シカクさんで購入したZINEの中からいくつかを今回は紹介させていただきます。
『散策!ローカルチェーン酒場1 得一』(酒と散策)
本来であればゆっくり周遊してじっくり作品を探したいけどきっとそれは無理だと思い、事前にどんな方がどんな作品を出されるのかな、とSNSでハッシュタグ投稿を見ながら物色していました。その中で「これだけは、これだけは買わねばならん」と思っていたのがこのZINEです。売り切れてやいないかとヒヤヒヤしましたが、無事入手できてよかった……
フリーライターのスズキナオさんと橋尾日登美さんで構成されているチーム「酒と散策」が出されていて、タイトルの通り「得一」というローカルチェーン立ち飲み酒場について書かれています。全店舗巡り、店ごとの違いなどを紹介されているのですが、これを読むだけで「得一」というお店がいかに愛されているのか、その魅力がビシビシと伝わってきます。
家に帰るまで待ちきれなくて福岡に戻る新幹線の中でページを開いたのですが、読めば読むほど「得一」という未開の地への興味をそそられ、岡山を過ぎたあたりで「なぜ博多方面の新幹線に乗っているんだ……なぜ大阪にいる間にこの本を読まなかったんだ……」と今すぐにでも反対方面の新幹線に飛び乗りたい気持ちを抱えながら、結局大人しく帰りました。
ぜひ今後関西の(そしてゆくゆくは全国の)ローカルチェーンを散策して、第二弾、第三弾とシリーズで出していただきたいです。あと余談ですが、裏表紙がおすすめメニューになっているのもまたとてもよかったです。全部安くて驚きます。たら白子天ぷら食べたい!
『どこか遠くで飲みたくて』(今野ぽた)
信頼のおける酒飲みの一人としてSNSで投稿を拝見していた今野ぽたさんの日記本で、2020年から2024年までの間の高知旅行旅の記録がピックアップされています。同じ土地を何度も訪れていくうちに行きつけの店や馴染みの場所が増えていき、それに伴ってその土地での過ごし方も少しずつ変わっていく。その様が積み重なった記録から伝わってくるようで、えも言われぬ味わいを感じました。
あとはなんと言ってもその飲みっぷりの良さ。酒場の話が度々出てくるのですが、食べるもの飲むもの全てが美味しそうで、酒飲みの美学が文章から滲みでているようで、高知の酒場に飛んでいきたくなりました。先に紹介した『得一』もですが、酒好きが書く酒にまつわる文章にどうやら弱いようで。そういった意味でも嗜好にドンズバな一冊でした。
今野ぽたさんには今回会場でお会いすることができました。いつもSNSで見ている人が目の前にいるのはちょっと不思議でした(それでいうとチヒロさんが目の前にいたのも不思議でした)が、これだけでもう大阪まで行った甲斐があったと思います。
『郷土ものおもちゃ』(おだ犬)
文学フリマで買った本はまだまだあって、それを紹介して今回のお手紙自体を #文学フリマで買った本 にしてもよかったのですが、それ以上に紹介したい本をシカクさんで買ってしまいました。以前のお手紙でも何度か「タイトルは大事」という話が出てきたと思いますが、このZINEのタイトルの素晴らしさたるや! 今年見た中で、いやこれまでを振り返ってもここまで素晴らしいタイトルないんじゃないか、と一眼見た時から絶対に欲しい本一覧表(脳内所蔵)に入れていました。
そんなインパクト満点のタイトルに劣らず中身も素晴らしくて。著者が旅先で出会った郷土玩具について、たくさんの画像と丁寧な説明文で紹介されています。おまけにどこで買ったのか(どこで手に入るのか)まで書かれてる親切さ。これまで郷土玩具に馴染みのない生活を送っていたんですが、この本を読んだことでその魅力に気づかされ、今後は旅先でまず真っ先に土産物屋を探してしまうことになりそうです。驚異の影響力。
シカクさんにお邪魔したのも一年振りでしたが、相変わらず店内至る所に面白そうな本が並んでいて、一冊ずつ手に取りながらまだ知らない作品は山ほどあるなあとつくづく思い知らされました。大阪に行ったら必ず立ち寄りたい、自分にとって変えの効かない場所です。ましてやチヒロさんにも会えたし、今回最後に向かった場所がシカクさんだったのですが、おかげで大阪旅を最高の形で終えることができました。改めてありがとうございました!
一息つく間もなく、次は文学フリマ福岡がもうそこまで迫ってきています。ホーム戦とはいえど気を抜くことなく、今回大阪での反省を踏まえて望みたい……とかいう前にまず作品を完成させねばならない。毎年この時期が一年でいちばん忙しい(自分で勝手に忙しくしている)ような気がします。とはいえ乗り切ればあとは楽しい未来が待っているはずなので、もうひと踏ん張りしていきたいです。
またどこかしらのイベントで別の形でご一緒できる日を楽しみにしています。入った店に偶然いるなんてことがあったら素敵ですね。
ではでは、次回のお手紙楽しみにしてます
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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。
次回更新は「かもめと街」です。
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