四月二十九日(雨)
大型連休初日。開店から土砂降りの雨。屋根を叩く雨音の大きさでもその激しさがわかり、こういう時は逆に潔く諦めることができる。軒先に出している看板を階段の上まで持ち上がり、入り口扉の前に置く。ぼんやりしつつ数日前の日報をちまちま書き進めていたら、昨年末に近くのカフェで挨拶した某作家さんが来店。ちょうど挨拶した頃が作家活動を始めたばかりだったらしく、その頃はまだ用意できてなかった名刺が出来上がったので改めて挨拶に来てくれた。雨の中ありがたい。
他にお客さんが来る気配を全く感じさせないほど相変わらずの雨足だったので、某作家さんとゆっくり話ができ、年明けからの色々な活動について教えてもらった。勢いがあるうちにいけるところまでいく、そんな姿勢が発言の節々から伝わってきて眩しい。自信が創作活動をしていなくても、活動をしている人たちから様々な声が日々集まってくる。そうやって集まった情報を、少しでも良い形で活動を始めたばかりの作家さん達に還元していく。言うことと言わないことの塩梅は相変わらずむずかしいけど、一人でも多くの作家さんが長く活動を続けていけるように、これからも出来るところからやっていかねばなあ。若い作家さんと話をするたびに、そんなことを思う。
エガシラさんが来店。北九州の某所でおよそ一年ぶりに間借り出店したものの、雨が凄すぎたので早仕舞いしてこちらに来たとのこと。出されていたパウンドケーキを差し入れにいただき、その場に居合わせた某作家さんにお裾分けする。とにかく乳化にこだわったとのこと。乳化を意識して食事をしたことがなかったので、新しい物差しができてうれしい。
早仕舞いをしてこちらに向かっている最中に知人から「これから行くけどまだやってる?」との連絡があったらしく、店を早く閉める判断のむずかしさについてエガシラさんが話していた。展開に期待して少しだけ粘ってみようと思っても結果誰も来なかったり、諦めた時に限ってその直後に誰か来ていたり、似たような経験は山ほどしてきたので、うまくいかないものですよねと応える。もちろん功を奏す日(粘っていたらお客さんがやってくる)もあるので一概には言えないが、誰もいない店内で長時間ぽつんといると、この時間を使って何か出来ることが……なんて気持ちがむくむくと芽生えてくる。こればっかりは仕方ないので、今後も柔軟に開けたり閉めたりしながら葛藤を続ける。エガシラさんに『会社員の哲学』をおすすめし、エガシラさんからは鉄が錆びた時の匂いは鉄から発せられるわけでなく、それに付着した皮脂などから出ているものであると教えてもらう。博識な人だ。
その後若干雨足も弱まったものの、例によって店でぽつんとする時間があった。早仕舞いについて話をした日に早仕舞いするのもなと思いその後しばらく粘ったところ来客があり、これがあるから営業時間はなるべく開けておいた方が良いなと、至極当たり前のことを改めて思った。
あと何回これを思えば身に沁みるのだろうか。