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この連載はかもめと街 チヒロさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月25日(シモダ)・10日(チヒロさん)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら。
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かもめと街 チヒロ様
暑くなったり寒くなったり、連日よくわからない気候に翻弄されている間に容赦なく時が過ぎ、2月も終わりが近づいてきました。今年は閏年ボーナスで一日多いとはいえ、その恩恵を感じるまもなく年度末を迎えてしまいそうです。
矢の如く流れる光陰の中でブックバーひつじがも(前回チヒロさんがお返事をくださった日に)なんとか5歳の誕生日を迎えることができました。手紙の中にお祝いの言葉を添えていただきありがとうございました。相変わらずいつになったら余裕が生まれるのか皆目検討もつかないスレスレの日々を送っていますが、そんな中でこの手紙のやりとりみたいな楽しいことをできるだけ多く味わえるように引き続き頑張りたく思っています。
冒頭から締めの言葉みたいになってしまいましたが、前置きの前置きはこの辺にしておいて改めてお手紙のお返事を書かせていただきます。
「本屋なんか好きじゃなかった」はタイトルに惹かれて気になっていたものの、手に取る機会がなくまだ読めていませんでした。みたいなことを正直にバラしてしまうと、同じように自分もまだまだ「読書家」と呼ぶには程遠いなぁ……と思うばかりで。
仕事柄よく「本が好きなんですか?」だったり「月に何冊読むんですか?」だったり問われることが(それもあまり面識のない方から)少なくはないのですが、今でこそ「冊数でマウントを取られても困りません?」なんて冗談を返せるものの5年前は同様の質問にいちいちモゾモゾしていました。なのでこの本は読まねばですね……!
ご紹介されていた日記もとても気になりますし、そもそも「日記屋 月日」さんにまだ一度も足を運べていないので(お恥ずかしい!)、そちらにも行かねば。ねばねば言って申し訳ないです。「なnD」は東京の書店でたまたま9を見つけて持っていますが、これなんて読むんだろうと思っていたのでお返事を見てスッキリしました。そしてチヒロさんのお手紙に対する反応から製作者さんにたどり着くことができました。SNSをされていることも知らなかったので、ほんと「全日本ZINEファンクラブ」様様です……!
前回のお手紙の最後に書かれていた「見てくださっている方に間接的に薦めているようなもの」は僕もそう思いますし、このやりとりを介して間接的にさまざまな人たちと関わることができるのを毎回楽しく感じています。(同時にプレッシャーにもなりますが……)
基本二人のやりとりではあるものの、いろんな形で「全日本ZINEファンクラブ」の会員を増やせるように、引き続き色々紹介していきたいですね。と、今なら紹介に流れていけそうなのでこのタイミングで今月のおすすめをご紹介させていただきます。
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『オムにバス』(ワクワク)
昨年下旬に福岡で開催されたZINEの即売イベントで入手した、CDアルバムのジャケットをイメージさせるデザインのリソグラフ作品です。様々なミュージシャンを題材にしたダジャレ(「ジャミ6割」や「素手でいいマーキュリー」など)をイラストで紹介しているんですが、かっちりとこだわったデザインと対照的にそのダジャレが全体的にゆるくて良いバランスを保っていて、めちゃめちゃ素敵なんです。ダジャレのオムニバスアルバム。
ZINEへの関心が深まるにつれ、リソグラフ印刷が醸し出す味わいや趣のようなものにどんどん惹かれるようになってきました。文字やイラストを楽しむ書籍的な立ち位置であり、同時に作品としても愛でることもできる。さまざまな楽しみ方ができるのがすごいと思いますし、この『オムにバス』もまさにそういう一冊です。
『新刊落としました もう二度と新刊を落とさないための理論と実践』(神聖自炊帝国)
先の『オムにバス』がジャケ買いしたものだったのに対して、こちらはタイトルで心を奪われて数年前に文学フリマで即買いしたものです。書店のコーナーにあっても一見気がつかないぐらいの新書を模した装丁が素晴らしくて、ついつい本棚に並べたくなります。そして最近サボってるなぁ……とふと思ったらおもむろに手に取って表紙をじっと眺めて、中をパラパラ開いて、本棚に戻す。この数年で実際に何度かそれをやりました。お手紙を書くにあたって自分の行動を度々振り返りますが、買った本の一部を自身のモチベーター的位置付けで扱ってたりして、そういう本はもはや読む読まないの外側で手に取ることの方が多いことに気がつきました。もちろん購入時はそんな邪な気持ちで手に取っていないものの、結果的にそうなっているので不思議です。
『新刊落としました〜』はその畏まった見た目とは裏腹に「編集部選!新刊を落としたときの言い訳ベスト42」や「新刊を落とさないために明日からできる10のこと」などのゆるい章もあり(というより全体的にゆるい)、タイトルで「理論と実践」と謳いつつも随所に大喜利的な要素を含む、決して自己啓発本ではない本です。それでも読んでいくうちに「そうだよなあ、こういう余計なことを考えるから新刊を落とすんだよなあ」と自戒めいた感想を持ってしまうので、自己啓発にもぴったりなのかもしれません。
福岡の個人書店の方達と一緒に本を作る計画を立てているのですが、年が開けていまいち進みが遅くこのままだとまさに「新刊落としました」になりかねないと思ってこのタイミングでこの本を手にとった次第です。頑張るぞ……!
『Color of Flower』(丸田ちひろ)
昨年参加した宮崎のZINE即売イベント『Zine it!』で隣のブースになったのがきっかけで、イベント中に購入させていただいた本です。文学フリマなどもそうですが、こういう催しって同じ場に居合わせたりその中でブースが隣になったりして偶然面白い作家さんや作品と出会うことがあって、良いですよね。丸田ちひろさんも普段は鹿児島で活動されている作家さんなので、この日お話できたのもすごい偶然でした。
丸田さんは雑誌等を用いたちぎり絵(コラージュ)を普段から制作されていて、この作品集にはその中から主に花をモチーフにした絵が多数掲載されています。どの作品もとても色鮮やかで、また細部をよくよく見ると元々のデザインがうまく活用されていて一枚の絵の中でそういう発見をする楽しむこともできます。ちぎり絵といえば木村セツさん(90歳セツの新聞ちぎり絵』など)が有名ですが、セツさんがちぎり絵を始められた際に丸田ちひろさんの作品を参考にされていたとのこと……!
数日前から北海道札幌市にあるGallery&Shop 馬と獅子さんで「日本全国ZINE/リトルプレス博覧会」というイベントが始まりました。「全日本ZINEファンクラブ」に匹敵するスケールのでかいタイトルの催しですが、その名の通り47都道府県それぞれで活動している方に募集をかけ、北から南から集めた作品を会場で一挙に展示販売されています。今回幸い福岡枠でお声がけをいただきました。ありがたや。
そしてちなみに先程紹介した丸田ちひろさんも鹿児島枠で参加されています。前回の宮崎に続いて、今度は北海道。福岡の飲み屋と鹿児島の作家さんが県外の至る所で一緒になるのが面白く、改めてZINEを作ってよかったなぁとしみじみ思いました。いつかチヒロさんとも同じイベントでご一緒してみたいです。
そしてなんとなんとなんと、「全日本ZINEファンクラブ」でもご紹介して、それ以外でも日頃から面白いZINEやミニコミを入手する際に大変お世話になっている大阪此花区のシカクの代表たけしげみゆきさんが来月ブックバーひつじがでイチオシ本の紹介イベントをしてくださることになりました……!うおおおおおおおお!
大尊敬するたけしげさんのおすすめを福岡で、ましてひつじがで聞ける日が来るなんて。未だに全部夢なのではないかと、度々頬をつねります。今もつねりましたがちゃんと痛かったので少し安心しました。おすすめされた本はなんと当日購入できるようにしていただけるとのことなので、誰よりも買ってしまうかもしれません。ちょうど次回こちらからお手紙を出すタイミングがイベント後なので、その後日談もお伝えしますね。
店の外でも中でもZINEにまつわる楽しい話が舞い込んでくるようになりましたが、それもこれもこのチヒロさんとのやりとりがあってのものだと思います。ぜひ引き続き「全日本ZINEファンクラブ」活動のお相手よろしくお願いします。
ではでは、来月のお手紙も楽しみにしてます。
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かもめと街のチヒロさんと毎月25日と10日にそれぞれのサイトでzineを紹介し合う連載を始めました。
次回更新は「かもめと街」です。
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