五月五日(晴れ)
開店早々、一階のスタッフさんが「軒先の看板が風で吹き飛ばされてたので倒しておきましたよ」とわざわざ二階まで上がってきて教えてくれた。店内から軒先の様子はさっぱりわからないのでとても有難い。お礼を言って、一緒に階段を降り、情けない看板を回収して屋内の扉前に設置。四年と少し店を続けてきたけど、風で看板が吹き飛ばされたのは初めて。形状や重さからしてむしろよく今まで飛ばされずに耐えてきたなと労いながら、雨が降っているわけでもないのに軒先の情報がほぼ皆無になった状態で営業を続けることに。店内から軒先の様子はさっぱりわからないので来店者が通り過ぎないことをただ願った。
少し前から取扱を始めた『酒場の君』の購入を目的にお客さんが来店。書籍の販売を初めて幾年、当初はひつじがで本が買えることを知らない(なぜならブックバーだから)人の方が多かったが、地味にお取り扱いさせていただく本の種類が増え、それに連れてひつじがで本を買うことを違和感なく思ってくれる人の数も増えたように感じる。そしてSNSなどの投稿で入荷の知らせを見て目掛けて店を訪れる人の姿もようやくぽつぽつ見られるようになってきた。嬉しい。売る売らないよりも面白いのに知られてないものを知ってほしい思いが強くて、扱う書籍も福岡市内で手に取れる場所が少ない(その中で自分が面白いor面白そうだと思った)ものに限ってたし、その姿勢をこの先も変えるつもりはないけど、もう少しだけ書籍販売の方にも力を入れても良いのかなと思うぐらいに、本を販売すること(それをきっかけに広がる色々な人とのやりとり)が面白い。
ひつじがで(商品として)お取り扱いしている本や焼酎の作り手さん達は皆ことごとく優しい。作り手が身近に存在するから余計にそう感じるのかもしれないが、不思議なくらい素敵な人たちとぶつかるし、だからこそ余計にその人が作ったものに関して下手な説明はできないなとこちらにも気合が入る。一見焼酎や本を勧めながら、実のところはその後ろにいるそれを作った人たちの魅力を伝えているし、伝えていきたい。年数を重ねるにつれてその姿勢が色濃くなってきているし、今後も引き続きそういう場にしていきたいと思っている。
早い時間に客足が落ち着き、日付が変わるよりもだいぶ早くに店内が静かになった。翼日に数十回目の誕生日を迎えることもあり、その瞬間に店内に誰もいないのもある意味ひつじがらしくて良いなあなんて思いながら本を読んでいたら日付が変わる数分前に階段を上がる足音が聞こえ、某氏(初来店)が店の扉を開けた。初めて行った店の人間から席に着くや否やちょうど誕生日を迎えたと言われても困るだろうと、その件には触れず接客。その後井尻でワインバーを営む某氏が来店して「お誕生日おめでとうございます」と一杯ご馳走してくれた時に初めて誕生日であることが伝わった。先に言ってくださいよ、と言われたがこのぐらいの伝わり方でむしろ丁度良いような気がする。自分の都合を押し売ることなく、自然にその場を過ごしてもらえるように明日以降も心がけたい。