五月十日(晴れ)

恐ろしく気持ちの良い天気。看板を出して背伸びをして、店内に戻る。まだ明るいうちに近くで飲食店を営む某氏が来店。店のInstagramのストーリーを投稿するための画像編集をしていて、その様子をじっと見ていた。最終的に投稿するまでに一時間弱かかっていて、それを一年近く毎日続けているらしい。すごい。簡素化だけを意識し続け、弛まぬ研鑽の結果今は10秒(本を選んで一枚撮影し、それを無加工で投稿)で最低限の投稿を済ませているひつじがとは姿勢が違う。だからと言って「よし、いっちょ頑張るか!」とは決してならないが、SNSを活用しようと思ったらこのぐらいで臨まなきゃだよなあ、とSNS投稿用のカメラを持参していた某氏と話をしながらひしひし感じた。特に何をするわけでもないけど。
少し前まで近くの学校に通っていた某氏たちが初来店。それぞれ今は料理の道に進んで修行をしているらしく、レシピが載っている専門書を探しに良く古書店に通っていると聞く。インターネットで検索して出てくるレシピは大衆向けにアレンジされていて、現地で古くから食べられている味(いわゆる本場の味)とは異なることが少なくないらしい。古くからあるレシピ本(日本語訳すらされていないもの)を解読しながら極力その頃その場所で食べられていた味を再現していると言っていて、改めて本という媒体の魅力を知った。
ご近所に住む某氏が初来店。一年前から店の存在は知っていたけど、中の様子がわからず入る勇気が出なくて、今月末に県外に引っ越すことになりその前に一度行ってみるかと思い扉を開けたとのこと。中の様子がわからず入る勇気が出ない話は度々耳にするし、こちらもこちらで外の様子がわからずそんな人が店の前を素通りしていることをわからずに店の中でぼうっとしている。表に情報を出して入りやすくするのもなんだか違うし、基本的にただ待つしかない中で、何かしらのきっかけで店の扉を開けてくれる人がいるのは嬉しい。そうやってせっかく会えた人が束の間で福岡を離れるのは幾分寂しくもあるけど、そのぐらいの距離感がちょうど良いような気がする。一度も顔を合わせることなく福岡を離れる人の方が多い中で、そういう寂しさをくれる人が福岡にいる間に足を運んでくれることの有難みを、いつまでも忘れずにいたい。
